弊社の区分けでいうと、「鉄・非鉄金属スクラップ」と「電線スクラップ」に該当します。
まず、目先の状況からですが、特に「鉄スクラップ」の価格水準が芳しくありません。
たとえば、10月11日に関東で実施された鉄スクラップ輸出入札の平均落札価格(H2)は、FASトン2万2641円と、9月11日実施分より3291円安だったようで、2009年4月の2万1636円以来となる安値です。
トン2万2641円ということは、キロ換算で22円64銭です。
岸壁で鉄スクラップを引き渡しても、キロ22円が売値。
岸壁での引き渡しに至るまでの販売諸経費を考慮すると、我々のようなヤード運営者にとっては、14〜15円/kgが原価じゃないでしょうか?
持ち込みのお客様であっても、買い取り業務自体で多少は経費(たとえば土地代や重機の燃料代など)を要します。
原価からさらに数円引いた金額が、買い取り価格の適正水準といえるのでしょう・・・。
また、排出者であるお客さんの下へ引き取りに行くとなると、キロあたり10円以上の諸経費を見込まなければなりません。
キロ10円の諸経費を見込んだとして、鉄を2トントラックに満載しても粗利益は2万円。
これを一日2往復したら、粗利益は4万円。
トラック、燃料、土地、重機はもちろん、他の間接経費も使って4万円の粗利ですので、これ位の粗利でようやくスタッフの人件費+諸経費が賄われる水準です。
実勢での取り引き・買い取り価格を見ていると、皆相当な無理をしているのが現実ですね。
鉄スクラップに関しては、持ち込みで10円/kg程度、引き取りならゼロ円引き取りくらいでないと、まともな商売とは言えないのが本当のところではないでしょうか。
雑品についても、例えば普通雑品などは鉄スクラップと価格水準は同程度なため、同じように利益を生み出すことが困難になっていますねえ・・・。
間接経費を考慮すると、「その価格で買い取りしていては、実質赤字でしょ?」というケースも多く見られます。
いわゆる工業雑品についても、今は品質が問われる時代かと思います。
それなりの品質のものでなければ、仕分けの工程の中で多くのダストが発生してしまって差損が発生しかねませんし、非鉄比率が少ないものなどが混入していると、全体の品質を大きく落としてしまいます。
何より心配なのは、特上雑品ですねえ。
「特上雑品」って、意味分かりますか?
雑品、すなわちミックスメタルの中で、銅やアルミなどの非鉄割合が大きく、外用の機器と内用の機器が、皮付き銅パイプで結ばれているアレですわ。
流れによっては、グローバルなリサイクルフローが完全にストップしても不思議ではないと思います。
大きな力による「さじ加減」によっては、息の根を止めるのはさして難しいことではありません。
例えば、すべての特上雑品に対して、家庭用でなく業務用であることを証明するように義務付けたり、ガス抜き済みであることの再確認義務が発生したりすれば、事実上グローバルなリサイクルフローを止められたも同然です。
こんな嫌がらせみたいなことを実行しても、結局高い費用を支払う流れにはならないのにねえ・・・。
恐らく特上雑品というカテゴリーが消えて、工業雑品という扱いで結局同じ流れに乗るのか、または一昔前に戻って自社解体になるんでしょう。
余分なエネルギーを使うだけで、誰も得する人はいない。
結局、市場原理に逆らうような動きは無駄だということです。
まあしかし、特上雑品に対するリスクが高いという認識は必要かと思います。
「大丈夫だろう」が現実になることを願っておりますが、仮に不安が的中するような事態になっても慌てる事がないようにしないといけませんね。
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